◆ 押入れはピンク

千夜呼が元々住んでたボロアパートが直ったらしい。
これでどこで野宿してやがんだとか心配しなくて良くなったけど
スケルトンいなくなった部屋で一人ちゃんと暮らしていけんのかとか
今までみてぇにマメに俺様んとこに顔出すのかとか新たな心配が出来た。
・・家なんて直んなくてよかったんだよ、うちに住んじまえば良かったんだ。
だけどなんか”心配だ”って言うと誤魔化すし流すし
あんまり心配されんの好きじゃねぇみてーだから言わねぇ。
あいつはアレで根っこの部分は強い奴だと思ってるし。


とりあえず、合鍵くれって言ってみたら普通にくれた。
・・・・お前も俺様の事、家族だって思ってくれてんの？


家具ッつー家具なんてほとんどなくて、飾りっけもなんもねぇ、寂しい部屋だった。
カーテンねぇから、夕焼けで部屋が夕焼けで真っ赤。
ガタガタいうちゃぶ台の上に、牛乳ビンに活けた白い花が一輪。
慶オニイチャンと爺ちゃんとで撮った写真が一枚。
・・・・・・・そんだけ。

写真に写ってる千夜呼は、もうマジですんげぇいい顔してる。
多分この時だって、家族全員失って周囲からはきつく当たられて
闇はあったはずだけど、きっとこの二人がその闇を照らす光だったんだな。

お茶も出せなくてごめんなさいです、って言って微笑む千夜呼の顔は
笑ってたけどやっぱなんか違ってた。
この写真の顔、もうしてくれねぇかな、出来ねぇのかな・・・・。
って思いつつ顔じっと眺めてたら、千夜呼がぽつり呟いた。

「ダレの事、見てるの？」

さぁな、って茶を濁したけどあいつは気付いてるはず。



時々泊まりに来ていいかって聞いたら、いいですよって言われたから来る。
オヤジさんいねぇ時は里栖も連れて来ようと思う。
この部屋は寂し過ぎるぜ。
よし、今度ゲーセン行ってなんか可愛いぬいぐるみでも取ってきてやっか。
１個だと里栖がスネるから２個だな、うん。



そういや押入れにゃ何入ってんだろうと思って開けてみたら
馬面マスクがこっち向いて２頭並んでて、超目が合った。

俺様がもうちっと心臓弱かったらどうすんだ、殺す気か！！（がくがく
って説教しようと思ったら、師匠の押入れの中はピンク色ですよね、って・・。

か、くわ、かかかか勝手に見んじゃねえーーーーーーーーーー！！

それにあれはバンドの奴らが置いて行っただけであって
決して俺様が買ったわけじゃねぇぞ！見てねぇとは言わねーけどよ！！

じゃあ師匠はどういうの好きですか？って、まぁそうだな俺様は・・・
って、言えるかアホ！ドアホ！！

ごほん、まぁ、とりあえずだな千夜呼・・・・・里栖には言うな（超土下座