◆ 生命

今日は久々にスタジオでバンド練習をした。
ノリは上々、次のライブで演る新曲もいい感じに仕上がった。
スタジオ使用時間が終わりに近づいたんで、上機嫌で片付けをしてたら
頼みがあるんだ、とドラムの野島が口を開いた。

「彼女にさー子供できちゃって、悪ィけどカンパしてくんねーかな。
　おろすの早いほうがいいからさ、金貯まるまで待ってらんねーじゃん？」

ヘラヘラ笑って『失敗談』として話す野島の腹を
自分が能力者だって思い出す余裕もなかった俺は手加減せず思い切り蹴飛ばした。
奴はふっとんで壁に叩きつけられて落ちた。
他のメンバーは一瞬の出来事に呆然としていた。

「やめとけって。」
出生の事情を知ってるベースの相模が慌てて仲裁に入る。
「うるせーよ・・・・野島、二度と俺の前に現れんな。」
「お、おいトラ！？」
「・・・・・ドラム叩ける奴探しとく。お疲れ。」
俺はスタジオを後にした。



なんで自分の子供を笑って殺せんだよ。
なんで子供が犠牲になんだよ。
子供の命なんだと思ってんだよ。
子供は玩具じゃねーんだよ、畜生ふざけんな。

俺は走った、家路を急いだ。
血の繋がらない、だけど泣きたくなるほど深い愛情をくれた両親の元へ・・・・・。

子供が犠牲になっている事件が続いていて胸が苦しかった。
冥福を祈るしか出来ないのがもどかしい。